一般小児科診療における超音波検査の活用例

一般小児科診療における超音波検査の活用例

院長がこれまでに診断してきた疾患の、(ごく)一部の例を挙げてみます。全て院長自身が診断した症例です。医学生や小児科研修医の先生方にもみていただけるよう、専門用語を多く含みますのでご了承下さい。患者様ご家族には、胸・腹はもちろんのこと、色々なところに使うもんだなぁ、と思っていただけると幸いです。 個人情報を示唆する情報は一切載せていませんが、念のため、各症例の年齢や状況などは変えています。

頸部 / そけい部・外陰部 / 関節 / 胸部 / 腹部:消化管 / 腹部:肝胆道系 / 腹部:腎・尿路系 / 腹部:生殖器

頸部
伝染性単核球症 伝染性単核球症(1)

6歳女児。発熱、頚部リンパ節腫脹血液検査ではWBC 21,500/μl、異型リンパ球6%、VCA-IgG 640、VCA-IgM 10、EBNA陰性。頸部エコーでは内部血流豊富で化膿性の変化を認めない、著明なリンパ節腫脹を認めた。

筋性斜頸 筋性斜頸

1か月男児。左胸鎖乳突筋内の腫瘤。経過観察のみで、4か月ごろにはほぼ消失した。

流行性耳下腺炎 流行性耳下腺炎

7歳女児。昨夜からの両側耳下腺腫脹。ムンプスワクチンはおよそ2年前に接種済み。エコーでは両耳下腺のびまん性腫大を認め、左側では耳下腺内部に径1.7cm程度のリンパ節腫脹がみられた。化膿性の変化は認めなかった。

反復性耳下腺炎 反復性耳下腺炎

6歳女児。右耳下部の腫脹・疼痛を主訴に来院。これまでに4、5回の同様のエピソードあり。ムンプスワクチン済。右耳下腺は著明に腫大し、内部に多数の低エコー域が認められた。耳下腺を圧迫すると、ステノン管開口部から膿性唾液が流出がみられた。

Basedow病 Basedow病

13歳女児。数ヶ月前からの体重減少、易疲労感などを訴え来院、前頸部の腫大(+)。血液検査ではTSH測定感度以下、fT3 19.45pg/ml、fT4 3.10ng/dl。甲状腺は全体に血流増加を伴うびまん性腫大(軽度エコーレベル低下)を認めた。

そけい部・外陰部
そけいヘルニア そけいヘルニア

両側そけいヘルニアの症例。2か月女児。啼泣時などに右そけい部が膨隆することを主訴に来院。右内そけい輪は1cm以上に開大し、同部から腸管の脱出を認めた。左側の内そけい輪も5mmと軽度開大しており、やはり腸管の脱出が見られた。

卵巣滑脱ヘルニア 卵巣滑脱ヘルニア

1か月女児。右のそけい部腫脹を主訴に来院。嚢胞様構造を有する、卵巣と思われる腫瘤を認め、小児外科紹介となった。

停留精巣 停留精巣

5生日男児。左陰嚢内に精巣を触れず。エコーでは、内そけい輪近くに精巣が存在し、その遠位側には精索水腫を認めた。内そけい輪は6mm程度に開大し、腸管脱出を伴うように見えるが、明らかな蠕動運動は観察中に確認できなかった。

陰嚢水腫 陰嚢水腫

2生日。両側の陰嚢水腫(+)。明かなヘルニアの合併は認めなかった。

関節
単純性股関節炎 単純性股関節炎

9歳男児。一昨日より「右足のつけね」の痛みが出現、昨日夜より痛みが増強し、痛くて歩けないようになった。発熱無く全身状態は良好。右股関節開排時の可動域制限著明。採血ではWBC 6,800/μl、CRP 0.15mg/dlと炎症反応上昇なし。エコーでは右股関節のUJS(Ultrasonic Joint Space: 超音波的関節腔)12mm程度と著明に拡大し水腫様であった。安静のみで自然に軽快した。

先天性股関節脱臼 先天性股関節脱臼

15生日の女児。骨性臼蓋は骨頭を全くカバーせず、骨性臼蓋嘴は平坦となり、軟骨性臼蓋は骨頭の内下方にあり軟骨膜が下にたるんでいる。左股関節Graf typeⅣ(高位脱臼)。

胸部
胸水 胸水

左側胸部の痛みを訴え来院した5歳女児。胸写では右下葉の肺炎像(+)、胸水貯留(+)で、肺炎・胸膜炎と診断。

腹部:消化管
キャンピロバクター腸炎(1)

7歳男児。一昨日からの下痢、嘔気、腹痛を主訴に来院。右下腹部に圧痛があり、母親は「虫垂炎ではないか」と心配していた。エコーでは虫垂炎の所見なく、回腸末端から盲腸・上行結腸の壁肥厚(特に粘膜下層)、Bauhin弁の浮腫、および周囲の腸間膜リンパ節の腫大を認めた。細菌性腸炎を疑い便培養施行したところ、Campylobacter jejuniが検出された。

キャンピロバクター腸炎(2)

3歳女児。1週間前から軟便あり、次第に便回数増加し水様便となった。排便時に腹痛を訴えるが、発熱なく全身状態は良好。昨日便に少量の血液混入あり。腹部エコーで回腸末端壁は粘膜下層を中心に肥厚し、Bauhin弁も浮腫状であった。便培養ではCampylobacter jejuniが検出された。

胃粘膜下腫瘍 胃粘膜下腫瘍

1か月女児。噴水様嘔吐を主訴に来院。幽門筋層の肥厚は見られないが、幽門の粘膜下に腫瘤を認めた。

肥厚性幽門狭窄症 肥厚性幽門狭窄症

20生日男児。噴水様嘔吐を主訴に来院。幽門筋層は5mm程度に肥厚していた。

急性虫垂炎 急性虫垂炎

9歳女児。4~5日前からの軽度の腹痛、嘔気があり、近医で胃腸炎として加療されていた。本日より腹痛が増強してきたため来院。理学的所見上、腹部のデファンスはハッキリしなかった。血液検査WBC 15,500/μl、CRP 1.1mg/dl。エコー上Douglas窩に少量の腹水、右下腹部に腫大した虫垂を認めた。層構造は明瞭で、明かな糞石や膿瘍形成は認めなかった。外科に転科し手術施行された。

急性虫垂炎穿孔 急性虫垂炎穿孔

10歳女児。5日前から腹痛、嘔吐、微熱が出現。昨日より39℃となりグッタリしてきたため受診。血液検査ではWBC 17,500/μl、CRP 12.8mg/dl。腹部CTでは虫垂はほとんど同定できず、明らかな腹水や膿瘍形成などその他の異常所見も認めなかった。腹部エコーでは右下腹部に境界不明瞭、不整形なmixed tumorを認め、虫垂と連続しているように見え、急性虫垂炎の穿孔による膿瘍形成を疑った。外科に転科し緊急手術となり、術中所見で上記確定診断した。

腸回転異常症 腸回転異常症

2生日。胆汁様嘔吐。上腸間膜動脈・上腸間膜静脈の位置異常および上腸間膜動脈周囲のwhirlpool sign(clockwise)を認め、回転異常症と診断。転院し小児外科で緊急手術となった。

腸重積 腸重積

1歳5か月女児。昨夜からの間欠的啼泣を主訴に来院。multiple concentric ring sign(+)。エコー下に生理食塩水注腸を行い、容易に整復しえた。

サルモネラ腸炎

6歳女児。3日前に焼き肉屋さんに行った。昨夜から発熱、下痢、腹痛が出現し来院。回腸末端壁は粘膜下層を中心に著名に肥厚し、Bauhin弁も著明な浮腫状であった。便培養ではSalmonella O-4が検出された。

腸管出血性大腸菌O-157感染症

6歳女児。3日前より腹痛、下痢が出現。昨日夜、便に少量の血液混入あり。腹部エコーで左側結腸の著明な壁肥厚(一部、層構造の不明瞭な部分あり)を認めた。便培養で、腸管出血性大腸菌O157が検出され、VT2陽性であった。幸い、HUS等の合併症はきたさず軽快した。

腹部:肝胆道系
伝染性単核球症(2) 伝染性単核球症(2)

( 1 )と同症例。腹部エコーでは、胆嚢壁の著明な肥厚を認めた。その他、軽度の脾腫、肝門部のリンパ節腫大も見られた。

先天性胆道拡張症 先天性胆道拡張症

3歳女児。数日前から軽度の下痢、腹痛があり、近医で胃腸炎として経過を見られていたが、本日朝より強い上腹部痛を訴えたため受診。来院時にはほぼ腹痛はおさまっていた。腹部エコーでは総胆管の著明な拡張(約1.1cm)を認めた。また、共通管も1cm程度と長いように思われ、膵胆管合流異常を伴う胆道拡張症と考えられた。最終的には戸谷Iaの胆道拡張症と診断され、大学病院で根治術施行された。

腹部:腎・尿路系
尿管瘤 尿管瘤

5生日の新生児。胸腹部スクリーニングの際に偶然、左の水腎・水尿管を認めた。腎盂は上極側と下極側とに明らかな連続性が見られず、重複腎盂が疑われた。膀胱左尿管開口部に尿管瘤を認めた。

水腎症 水腎症

3か月男児。偶然発見された右水腎症。腎盂腎杯の著明な拡張、腎実質の菲薄化を認め、SFU grade4の水腎症と診断。

重複腎盂 重複腎盂

新生児胸腹部超音波スクリーニングの際に発見された右水腎症。拡張した腎盂は分離してみえ、連続性が確認できなかった。

異所性腎(1) 異所性腎(1)

1生日。副腎は正常位置に描出されるが、その下方には腸腰筋が描出され右腎が映らない。

異所性腎(2) 異所性腎(2)

異所性腎(1)と同症例。骨盤腔やや上方~臍上レベルの右側に、腎特有の構造が認められる。明らかな水腎症は無く、左腎との交通も認めなかった。

ナットクラッカー ナットクラッカー現象

10歳女児。肉眼的血尿を主訴に受診。全身状態良好で理学的所見・血液検査に異常なし。腹部大動脈と上腸間膜動脈間の狭小化および左腎静脈の著明な拡張を認めた。明らかな腰静脈等への側副血行路は描出できなかった。

膀胱尿管逆流 膀胱尿管逆流

6生日。胎児エコーで左水腎症を指摘されていた。左下部尿管は排尿時に著明な拡張(バルーニング)あり、膀胱尿管逆流の存在が疑われた。

副腎出血 副腎出血

2生日の新生児。全身状態良好。胸腹部のスクリーニングの際に偶然、左副腎内に1cm程度の類円形嚢胞性腫瘤を認めた。color dopplerでは内部血流は認めず、副腎出血と思われた。その後の経過観察で自然に消失した。

多発性嚢胞腎

10歳男児。偶然発見された多発性嚢胞腎。両腎に大小多数の嚢胞を認めた。「腎嚢胞」の家族歴があり、ADPCKが疑われた。

腹部:生殖器
卵巣嚢腫茎捻転 卵巣嚢腫茎捻転

13歳女児。昨日からの腹痛嘔吐。近医で胃腸炎として対処されたが、その後も症状が持続するため来院。下腹部骨盤内に一部充実性部分を伴う10cm超の巨大な嚢胞性腫瘤を認め、卵巣嚢腫茎捻転を疑われ緊急手術となった。病理学的には左卵巣由来の成熟奇形腫であった。

クリニック概要

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